・・「ごめんください 遅くなって申訳ありませんがテレビの修理に参りました。さしつかえありませんでしたら修理させていただけませんか?」と、旨を告げ、引き戸を引いたがビクとも動かないし 木の腐ったような妙な臭いと共に、木屑がパラパラと落ちた。
もう一度声を掛けた時、中から・・「もう寝る用意をしたので後にして下さい」・・と、男だか女だか又は子供だかよく解らないような返事が聞こえた。 それで・・「遅い時間におさわがせしました、では明日改めて参りますのでよろしく」・・と答えたけれど、それによる返事は帰ってこない。
農家は夜、休む(寝る)のが早いと聞いていたから・・声を掛けるべきではなかったな・・と思いながら雨でぬかるんだその空き地で U ターンして熊谷の事務所に帰った。
あくる日、朝一で訪問すべく、その家を探したが、なかなか家の門が見つからない。入って行く処には確かに祠があるので間違いは無い。 農道と祠の周りを行ったり来たりしたが門が見つからない。 しかたがないので、そばを離れ電話をさがし、その家に連絡をとった・・(田舎だから公衆電話もすぐ近くにあるというわけにはいかない)・・家の場所を聞いているうちに・・「祠の処を真っ直ぐに入って突きあたりだ」・・という。やはり間違いはない・・と思い、もう一度同じ処に戻った。 すると、その家の人が遠くで手を振って・・「ここだ、ここだ」・・といっている。 しかし昨日の門が無い。
おかしな気持ちになりながら 名前、住所を確かめたが修理伝票と同じである。 早々に修理を済ませ、領収書を書きながら、それとなく・・確かに昨日の8時ごろ訪問したこと、大きな門をくぐって家の庭に入ったこと、修理は後にしてくれ・・と云われたこと等を話した。 話をしているうちに・・たしかに私の家は4〜5年前まで、今の家を建てるまでは前の空き地に大きな門があって、家の作りも農家としては大きく古いもので、私の世代になって壊した・・との事。 その人も変な顔になった。 私のほうがもっと変になってゆがんだ。