美川は、何十年も動作していなかったと思われる部品の通電に際しては、高電圧部分の絶縁不良が心配であったから一日中電源を入れていた。 ほのかなパイロットランプの豆球に照らされたダイヤルとピカピカに磨かれた裸の五球スーパーが自分に笑いかけているように見えてしようがなかったし、幼い頃の高揚した顔とラジオを見比べながら完成を共に喜んでくれた母の笑顔が重なっては消えた・・・・。
・・・・・そうして、遥かなあの日のように、ラジオを脇に夜明けまでそのまま過ごしてしまった事を家族の誰が知っていようか・・・・2021年、美川一郎 76歳の秋である。
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