電源トランスは 「 ふせ型 」に拘り・・230V〜250V・40〜60mA 6.3V・2A 5V・0.7A・・の物を、 出力トランスは、6ZP1に合わせ、一次 12KΩの小型バンド型と、 430PF 二連バリコン等を、足を棒にしてジャンク屋を回りやっと手に入れた。 美川は、もう何ヶ月もこんな風にして秋葉原をウロついていたのである。
実は、五球スーパーをもう一度造りたい・・と思ったきっかけは、ジャンク屋の前を通った時に偶然にもスーパー用のコイルと中間周波トランス( IFT ) がビニール袋に、ひとまとめで売られていたのを見たからであった。 このような部品が、この時代に・・・・。
・・・「これが有れば、あとはなんとかなる」・・・と、後先も考えずに衝動的に買ってしまったのであるが、少年の頃、わずかな小遣い銭をにぎり、やっと目的の部品を手にした嬉しさが頭をかすめた。 懐かしさと同時に・・・「もう一度あの五球スーパーを造ってみたい」・・・との気持ちを、美川は抑えられなかったのである。
この日も美川一郎は、かねてからジャンク屋に頼んでおいた「横行ダイヤル」が見つかった・・との知らせに馳せ参じていた。 年代物で、くすんだ色のダイヤルであったが未使用品である・・・「よくこんな物が今時、存在したものだ」・・・と、美川は思った。 同年輩店主の・・・「お客さんの希望をかなえてやりたくてネ、倉庫の隅々まで探したよ」・・・との言葉に涙がにじんだ。
小物部品の内、入手難には真空管のソケットとパッティング・コンゲンサーがあった。 美川は ソケットにベーク板ウエハー型・・と決めていたから、ジャンク品の良質品を探すのに秋葉原以外にも心当たりの店を一日中探し回った。 ソケットはオーディオアンプ等に使用されるようなモールド型で良いのであるが、ここは是非ともウエハー型でなければならない。 パッティングコンデンサーも、これを使用しなくても近似値の固定コンデンサーに置き換えれば大きな支障は無いけれど、美川は純正部品に拘った。