アンテナコイルと局発コイルは、よくホコリ、ゴミを除去し、純水で拭い、乾いたら高周波ニスを塗布した。
真空管ソケットは 強引にも水道水を流しながら歯ブラシでゴシゴシこすって丹念に洗い、水気を切って陰干しした後、よく乾いたら無水アルコールに漬け清掃し、再度歯ブラシに研磨剤を付け金属部分を磨いた。
パッティング・コンデンサーも、マイカを取り外し、純水と無水アルコールで清掃する。
IFT は シールドケースを取り外し、コイル部分を点検後、コイルに高周波ニスを塗布する。 シールドケースは真空管シールドケースと共に水道水でよく洗い、乾いたら無水アルコールで拭い、極細サンドペーパーで丁重に一方方向にコスッテ磨き、ピカピカになったら薄くクリアラッカーを塗布しておく。
電源トランスと出力トランスは、純水で清掃した後、錆びを落とし、黒ラッカーを薄め液で相当薄め、明らかに塗ったことが解らないように数回に分けて塗布した。
スピーカーはどうするか・・の問題もあったが シャーシーをキャビネットに治めることは考えていなかったから、手持ちの一般用 16cm P・D 型を適当な大きさの木製箱に収めたものにする・・と、最初から決めていた。 音質を考慮すると、このほうが断然有利である。
美川は、部品を労わるように丁寧に作業した。 もう老人の顔では無く、あの頃の少年そのもの・・・であった。
間もなく シャーシーが出来たから取りに来い・・との連絡があって、美川は・・・「これで秋葉原通いも終わりだ・・俺もかな?」・・・と、なんとなくそう思った。 これまでに、ほぼ一年掛かったことになる。